着なくなった訪問着って売れるの?
ちょっとしたお出かけからイベントの参加にまで幅広い用途で使える「訪問着」は年輩の方であれば着用したという経験がある方も多いのではないでしょうか。
そんな訪問着をすっかり着なくなってしまった場合、それらは業者へ買取をしてもらうことは可能なのでしょうか。この記事にて検証していきましょう。
訪問着であっても買取り自体はしてもらえる
訪問着を買取ってもらえるかどうかの問題について、まず結論から申し上げれば、必ずしも買取ってもらえないというわけではありません。しかし、その価格に関しては少々気になることがあります。
★価格としては安い傾向
まず、全体の価格的な傾向としてですが、式典や重要な催しごとなどで用いられる「振袖」などと比べた場合、いかんせん安く査定されがちです。
これはいったいなぜなのかというと、訪問着というものの用途に大きく関係しています。訪問着というのは現代の洋服で言うなれば「カジュアルスーツ」に近いものであり、ちょっとしたイベントにも普段着にも問題なく利用できるということが強みとなっています。
しかしその分、素材や技術的には振袖と比べてそれほど力が入れられていないという場合が多く、買取価格に関しては差がついてしまいがちなのです。
★値段がつかない場合も
値段がつけばまだよいのですが、時として買取価格がつかない、無料での引き取りあるいは買取拒否を求められるといったことも稀にあります。
訪問着というのはその使用目的上かなり安く作られたものもありますので、そういったものはまともに買取ってもらうことが難しくなります。とくに、ポリエステルやウレタンといったような化学繊維で作られた大量生産型のものは、少々厳しいと言えるでしょう。
高い価格で買取ってもらえる訪問着
しかし、すべての訪問着が安く買い叩かれてしまうのかというと、決してそうではありません。中にはとても高い買取査定がおこなわれる訪問着も存在しています。
★素材が高級である
着物の価値はさまざまな要素で決定されますが、その中でも「どのような素材で使われているのか」といったようなことはきわめて重要です。
先の項目にて化学繊維が使われているものは安く査定されると解説しましたが、その逆に希少な天然素材、たとえば絹が使われているようなものは買取価格も高い傾向にあります。とくに、「丹後ちりめん」「松岡姫」などのような古くからその希少価値を認められてきたようなものは、たとえ訪問着であったとしても満足のゆく査定が期待できるでしょう。
★信頼性の高い職人が携わっている
着物の価値を決めるにあたっては「どのような人々が関わったか」もまた重要です。工場で自動機械によって大量生産されたものであればあまりよい値はつきませんが、もしその腕が広く世に知られている職人集団が手がけたものであれば、逆にかなり高い査定となるでしょう。
たとえば、「京友禅」や「加賀友禅」など、多くの人々に愛されてきた場所で作られた訪問着であれば、技術力の高い職人が関わっていることが前提に査定が行われます。(ただし、たとえそうであったとしても物の質が悪ければ、満足のゆく額にならないといったこともあり得ます。)
その中でもとくに高い価値がつきやすいのが「作家着物」です。個人の名前が歴史に残るほどの有名職人であったり、あるいは芸能人が有名呉服店とコラボして作り上げたものだったりと、他の訪問着とは明確に力の入れようが異なるものが少ないながらもあります。とくに、現存数が少なかったりすれば、驚くほどの価格がつく場合もあります。
訪問着を高く買取ってもらうコツ
訪問着を少しでも高く買取ってもらうためには、どのようなポイントに気をつければよいのでしょうか。
まずもっとも大事なのは、複数の業者へ査定申し込みをおこなうということです。現在ネット上で着物の買取を受け付けている業者というのはたくさんありますが、スタッフの知識や対応に少なからずムラがあり、店舗によって買取価格に大幅な違いが出るといったこともあり得ないことではありません。高価格を狙うのであれば、ひとつの業者に絞らずいろいろな業者に声をかけてみるのが必須と言えるでしょう。
そしてもうひとつが、保管状態の見直しです。ふつうの洋服のような管理をしていれば、着物というのはすぐにダメになってしまいます。せっかく高級な訪問着が家にあるのに、カビや虫食いでダメにしてしまっては元も子もありません。防湿性と防虫性の両方を兼ね備えた保管スペースを作りましょう。
安いというイメージの強い訪問着ではありますが、実はすべてがそうだと言うわけではありません。ご自宅にある訪問着が、実は非常に希少価値の高い逸品であった、といったような話も決して夢物語ではないのです。