着物は一度着たら丸洗いしないとダメ？状態を維持する秘訣

着物のクリーニングやメンテナンスというのは、現代の普段着に比べてかなり大変だとされています。形が崩れやすいうえに、湿気や虫喰いにも弱いなど、いろいろ気にかけなければならない部分があるのです。

長期的に着物の品質を保ちたいのであれば、これについてしっかり学んでおきましょう。

着物の丸洗いとは

着物をクリーニングする方法として、丸洗いというものがネットでもよく宣伝されていますが、これはどういった手法なのでしょうか。

わかりやすく説明するならば「着物をそのまままるごと洗う」クリーニング法です。たとえばスーツやドレスをクリーニングに出した場合、細かな箇所に付着したシミなどの除去も承ってくれますが、着物の丸洗いの場合、そのままで一気に洗浄してしまいます。

一見乱暴な方法かと思われるかもしれませんが、目立つ汚れに関しては繊維を傷つけにくい専用のブラシを使うなどしてしっかり対応します。現代のクリーニングでいう「ドライクリーニング」の形に近いとも言えるでしょう。

メリットとしては、依頼からクリーニング完了までが早いこと、全体的な臭いの除去などに強いということです。深刻な汚れというほどではないけれども、とりあえず洗浄をおこなっておきたいという場合に役立ちます。

一度着たら丸洗いすべき？

「着物というのはとても繊細であるため、一度着用したのであればなるべく毎回丸洗いした方がよい」という方もいらっしゃいます。しかし、それほど頻繁に丸洗いをおこなう必要は基本的にないと言ってよいです。

いくら着物がデリケートなものであるとはいっても、たとえば真夏の猛暑にそれを着用したまま何時間も歩き回って汗まみれになった、あるいは砂嵐に巻き込まれて全身が汚れてしまったといったようなことでもなければ、毎回丸洗いをおこなう必要はありません。せいぜい、3～4回着用したら一度丸洗いをおこなうといつたぐらいでも大丈夫です。

それに、いくらきれいにするためとは言え丸洗いをそう何度もおこなっていると、繊維を傷め品質を悪化させる原因にもなりかねません。

丸洗いのデメリット

丸洗いは受付けている業者が多く比較的すぐに終わりますが、その分短所もいくつか見られます。

たとえば、先ほども解説したように、細かい部分の小さな汚れの対策としては有効ではありません。それに加え、綿密な刺繍が施されていたり、金などの装飾が施されている着物を丸洗いすると、それらが破損するおそれがあります。

丸洗いだけではなく「水洗い」の検討も

着物のクリーニング法は丸洗いだけではありません。ほかにももうひとつ、「水洗い(洗い張り)」と呼ばれているものがあります。
水洗いが丸洗いと大きく異なっている点は、形になっている着物を一旦解きほどき、いわゆる反物の状態にしてからクリーニングをおこなうということです。これは機械でいう「オーバーホール」のようなものであり、そのためより隅々まで洗うことができます。

それに加え、水洗いではそれまで反物をつなぎ止めていた糊を新たに塗り直すというのが大きなポイントで、これによって着物のツヤや佇まいをもう一度よみがえらせることができる可能性もあるのです。

水洗いのデメリット

徹底したクリーニングがおこなえる反面、水洗いはあまり急いだクリーニングというのはできません。着物を反物にするなど丁寧な作業が必要になるので、どうしても時間がかかってしまうのです。

それに加え、技術料などの面で丸洗いよりもコストが高くかかる傾向にあります。また、高度な技術が必要となるので、実施してくれる業者も丸洗いと比べるとどうしても少なくなってくるでしょう。

状態を長く保つ秘訣

クリーニングをおこなうこと自体は悪いことではありませんが、できる限りそうならないような環境づくりも大切です。

着物の天敵はふたつあり、「湿気」と「虫」と言われています。着物の状態を良質に維持したいのであれば、防湿性や防虫性の高い収納家具を用意するなどして対策に務めなければなりません。とくに虫の被害というのはかなり深刻で、繊維を食い破られると買取の際の査定額にかなり悪い影響を及ぼすことがあります。質の高い防虫剤を使うなどして、絶対に虫が発生しやすい環境を作らないようにしてください。

それに加えてクリーニングのお世話になる機会を減らすため、あまりに外の環境が悪い場合は着用を控えることをおすすめいたします。もしどうしても着物を着ていかなければならない場合は、上着を羽織ったりすることを忘れないようにしてください。

丸洗いはいろいろと便利ですが、品質の維持を考えるならばその回数自体は少ないに越したことはありません。とくに買取を前提としているならば、いかに品質を落とさず保持するかに注意を払うようにしましょう。