幅広い着こなしができる小紋ってどんな種類があるの？

着物というとどれも同じと考えられている方も少なくないようですが、実はそうではありません。着物にもたくさんの種類があり、場所に応じた着こなしというものがかなり強く求められます。そうした種類の違いは、買取の際の価格にも大きく関わってくるのです。

今回はそんな着物の種類のひとつである「小紋」について解説をおこなっていきます。

小紋とは

小紋という単語をそもそもはじめて聞いたという方も多いでしょう。現代でこそ小紋も訪問着もいっしょくたに「着物」として語られることが多かったのですが、着物の最盛期であった江戸時代にはそもそも他の着物とは少々異なる特別な扱いがなされていました。

今のことばで小紋の定義について簡潔に説明すると、カジュアルな普段着です。みなさんがたとえばコンビニやカフェに行く際着ていくような、気軽に着用することのできる洋服のようなポジションが、この小紋でした。

★小紋の特徴とは
小紋が他の着物と大きく異なるポイントは、その柄です。たとえば京都で舞妓さんや芸子さんが身につけているような高級振袖は、細部にまでこだわり非常に手の込んだものとなっています。それに対して小紋というのはよく言えばシンプル、悪く言えばそれほど手が込んでいないというのが特徴。前も後ろもすべての部分の柄が均一なものとなっているのです。

なぜこのような柄になっているのかというと、大量生産を前提としているからです。低価格でカジュアルな着物を求めている消費者に対して手のかかった高価なものを売っても買ってくれませんし、そもそも生産スピードを維持することができません。だから、あえてシンプルなデザインとなっているのです。

そうした立ち位置のため、小紋は訪問着よりも一段「格」の低い着物として扱われていました。江戸時代において、礼儀が求められる公の場に小紋を着ていくことは、友人や家族の結婚式にジーパンを履いていくのと同じぐらい失礼なこととみなされていたのです。

現代においても小紋は目立たないながらも活躍しており、たとえば着物レンタルショップでたくさん取り扱われていたり、洗濯機でのクリーニングが可能な利便性の高いものがリーズナブルな価格で販売されていたりします。

小紋の種類について

小紋と一口にいっても、その種類はさまざまです。その特徴や品質によっては、同じ小紋であっても格が違うこともあります。

★京小紋
江戸時代にかなりの量が生産され、庶民の普段着として愛されていたのが「京小紋」です。京都がその一大生産地であったということが名前の由来とされています。

その特徴はいかにも京都らしい色彩の華やかさです。ものによっては使用されている色が少ないものもありますが、中には現代の価値観を通してみても美しさを感じるものもたくさんあります。

京小紋のほとんどはひとつの型紙を使って大量生産されたものとなっていますが、中には染京友禅の技術がふんだんに応用されているものも存在しており、それらは現代においても訪問着や振袖に近い価格で取引されることもあるのです。

★江戸小紋
数多く存在している小紋の中でもとくに人気が高いのが「江戸小紋」です。江戸小紋はその名の通り江戸の武家屋敷に住んでいた武士たちによって愛用されていた着物のひとつであり、カジュアル着とは思えないぐらいにデザインに力が入れられており、現代においても買い求める方がたくさんおられます。

江戸小紋の中でもとくに「縞」「大小あられ」「鮫」「通し」「行儀」からなるいわゆる「江戸小紋五役」と呼ばれるものは小紋の中でもとくに高いブランド性を有しており、これらであれば礼儀が求められるイベントの際着用しても無礼にあたらないという特別な扱いがなされていました。

小紋の買取状況について

買取ショップにおいて、小紋というのは訪問着や振袖と比べると、やや価格が低めに査定される傾向があります。カジュアル着的な用途であったため、多くの品が大量生産されており希少価値などの点で評価が得られにくいのです。それに加え、デザインのシンプルさや使用されている素材がそれほど珍しいものではないという点も要因となっています。

しかし、有名作家が制作に携わった京小紋や、先述した江戸小紋であれば、ものの状態にもよりますが、訪問着よりも高い価格で取引されるケースもしばしば見られます。一見地味な見映えの小紋に見えても、実は刺繍などにかなり力が入れられた逸品であったという話も少なくはないので、この点に関してはご注意ください。

着物の中でも小紋というのはとくに多くの製品が流通しています。そのため全体的な査定価格としては低めなのですが、中にはとても希少なものも混じっており、一概に「小紋はすべて安い」とは言い切れません。ですので、たとえ小紋であったとしてもまずは買取業者へ査定依頼を行うのがかしこいやり方だと言えるでしょう。